2017/01/27

根付 其ノ玖拾壱

『うらめし』
素材 : 鹿角



また自立せぬものを彫ってしまった・・・

所謂売り辛いといわれる幽霊の根付
縁起担いだり御守り的想いを籠め持たれる事の多い根付
特に現代根付ではその傾向が強い気が
幽霊怖いとか「死」を連想させるのは縁起悪いなんて
あまり好まれない意匠ではあります

確かに目頭腫らしてざんばら髪の恨み顔
口角からは血がタラリは・・・
怖い

ところがどうでしょう

頭部をサレコウベにしてごらんなさい
たちまちキャラ立ち
ポップで愛くるしいジャパニーズゴーストに大変身♪

なんて思ってしまうのは私だけでしょうか
そうですか
わたしだけですか(涙)

でも彫るもんね
彫りますよ♪





うらめしと 言ふ術もなし 弟切草
人をうらめしく呪ったり羨ましく妬んだとて口に出してはいけません
存在自体が「恨」を体言する弟切草でさえ言葉にもせず気取られず
慎ましく可憐な花を咲かせて見せるのだから・・・

なんて句を付けてみる・・・

怖くない怖くないでしょ?
前向きでしょ?ね?
えっ?

ん?





六面図





今回は根付スタンドとか台座なんてしっかりしたものではなく
撮影時自立用補助具的アイテムを製作してます





紐通し
サレコウベの中に真鍮棒をブリッジしてあるので
紐を潜らせてボディと連結します
定位置の他に気分で顔の向き変えられます





サイズはこんなシンプルでコンパクト!





サレコウベ幽霊
それも下顎無しスカルに天冠って
キャラ立ちするよねしないかな





ヒュードロドロドロ「うらめ・・・」
おっといけねぇ
口に出すとこだったじゃねぇかてやんでぃ
根付「うらめし」完成です

一応
根付は自立させる方向で
というのが暗黙のルール(私の周辺では)になっている感じで

確かに使用しない時 飾っとく場合
転がしとくより正位置で自立してた方が良いですからね

過去Galleryでも根付自立会議があったりなかったりして
根付は自立させる方向でという結論に至ってます

しかし

飛んでいるとか空中を漂っている等
浮遊しているモチーフの場合

底面に接地するための平面を設けたり
接地する「点」を三箇所以上底面に配置したり
結果浮遊感を削いでしまうような気が・・・

まぁ
その浮遊感を損なわず自立する意匠を捻り出すのがプロなのでしょう

そんな折
楽虫さんの幽霊の根付「あい」を拝見しまして
その根付には飾る時用の鹿角製根付スタンドも一緒に製作されており

おー!
そうだよねと
目からウロコと申しましょうか
それがあったかと

以後私も真似させて頂きまして
自立しない根付、浮遊感が欲しい意匠のものには
根付台、根付スタンド、根付ハンガー等々付けるようになりました

なによりアーカイブ写真が撮りやすいですし(笑)

今回の「うらめし」は
一応木箱の中に根付と一緒に自立補助具も収めておりますが
強い衝撃や振動が加わりますと簡単に倒れますので
おまけ程度にお考えくださいませ



さて次は

猫彫りますよ♪

至水が猫彫る言ったら?

そう
ハイ正解

猫又ですよね♪

2017/01/26

根付 其ノ捌拾玖

『怪流辺炉主』
素材 : 象牙、黒檀



投稿記事タイトルの作品ナンバリング其ノ捌拾玖
前回の投稿の根付「育男」のナンバーと前後しておりますが
コチラの方が「育男」より先
昨年末には完成していたのです

色々

ありましてですね・・・



昨年2016年11月
「第3回 THE GOLDEN NETSUKE AWARDS」授賞式参加のため
京都 清宗根付館に行きまして
授賞式当日の朝
根付館の近くにある梛神社へ寄った際
超立派カコイイ狛犬を拝見する事が出来ました

吽形の狛犬

阿形の方は下顎が欠損しておりましたが
それでも超立派カコイイ

すると唐突に

ホントいきなり

「双頭の狛犬獅子」

ってワードが頭に浮かび早速いつもの妄想開始
ものの数分でこんなのが・・・

怪気流るる地獄門辺り聳え立ち
絶える事無き業火を纏いし焼炉の主
地獄の番狛犬獅子
怪流辺炉主
ケ  
ル  ベ  ロ  ス

あーもう彫りたくてウズウズ止まらずですよ

彫りましょう





久々の象牙です

昨今世界的な象牙売買規制の動きが顕著になり
米国に続き中国でも商取引禁止が確定
「時代」といってしまえばそれまでですが
これが至水最後の象牙彫刻になりそうな予感・・・





六面図

向かって右が
阿形の獅子面
頭頂部に宝珠が埋包され
垂耳巻毛の獅子HEAD

向かって左が
吽形の狛犬面
一角耳尖りな狛犬HEAD
巻かないワサ毛で獅子HEADと対比させてみたよ





威嚇し荒ぶる獅子面
口角から火焔がムッハー

思慮深く黙する狛犬面
口開けないから鼻孔から火焔がムッフー





成りたて亡者よ地獄へようこそ
先ずはウェルカム火炙りを堪能するがいい





紐を通すとこんなです
火焔が結び玉を呑み込みます





サイズはこんなどっしり塊感
・・・大っきい(汗)





地獄の門番双頭の狛犬獅子
根付「怪流辺炉主」完成です



さてここで
この根付の悲しい顛末

根付の底面
至水の銘の上辺り一本水平に入った線が見えるでしょうか?

クラックです

ヒビが入ってしまったのです(涙)

根付師、というか象牙を扱う方々は
管理に相当気を使われます

気温の変化寒暖差、湿度、材に加わる様々な負荷・・・
意外に、実にあっけなく象牙は割れます

室内が乾燥する今の時期は細心の注意を払うべきでした
私の管理ミスが招いた取り返しのつかない事故案件です

此処にも其処にもクラック
嗚呼・・・

という事で
実はこの「怪流辺炉主」

売り物に出来ない(涙)

非売品なのですごめんなさい(滝涙)



それでこの「怪流辺炉主」
今後どうなるのかと申しますと

製作物が手元に残らないので
至水作品見本として自分で持ってるのもアリかと思ったのですが
それはGalleryも同じでして

本当にありがたい事で
在庫される事無く製作物が御購入されて行く現状

至水の根付が見たいとGalleryに来られた方に
何もお見せ出来ない事も多いそうで

Galleryと話し合った結果
至水の作例現物として
Gallery所蔵品となる事に決定致しました

非売品ではありますが
Galleryにて「至水の何か見せて」と仰って頂ければ
「怪流辺炉主」がお出迎え致します(涙)

象牙の扱いには努々油断してはならぬ

そう自分に言い聞かせた怪流辺炉主でありました



2017/01/24

緒締 其ノ弐拾

『こけこっこ』
素材 : 鹿角、黒檀



右フック一発でパパ軍鶏をイクメンに変貌させたママ軍鶏
二人(二羽)の愛情を注がれすくすくと育つのは
ハードパンチャーで名を馳せたパパ軍鶏のこっこ
闘鶏チャンピオンの血を受け継ぐ正統後継者なのです

という訳で

根付「育男」とセットになる卵の緒締を
彫りますピヨ♪





四面図
既に殻を破り臨戦態勢です
やんちゃだね♪





指先に乗っちゃう
金の卵は未来の闘鶏チャンピオンなのだピヨ





根付に添えられた川柳

育男を 育てた嫁の 右フック
金の卵は 後継こっこ

この「後継こっこ」とは
「パパ軍鶏のこっこは闘鶏チャンピオンの血を受け継ぐ正統後継者」
の事

後継者はパパ軍鶏のこっこ
後継者はこっこ
後継こっこ
こぅけぃこっこ
こぅけこっこ
こけこっこ

・・・・・

フーッ(汗)
完璧につながったぜぇ
(無理矢理だがな)





あたちパパみたいな闘鶏チャンプになるピヨ!
緒締「こけこっこ」完成です

一年後
ママ軍鶏譲りの鋭い右フックでKOの山を築き
闘鶏史上初の最年少女性チャンプが誕生してしまう事を
パパ軍鶏はまだ知らない
というかこの子が女の子だという事すらまだ知らない

あれ?
もしかして闘鶏センスはママ軍鶏の血統だったのね

パパ軍鶏立つ瀬なし(涙)



さて干支モノはこれで気が済みましたので
次は二月の季節モノだね

季節モノといえば
猫又だね♪

かみんぐすーん



根付 其ノ玖拾

『育男』
素材 : 鹿角、黒檀



いやー

昨年末から年始にかけて色々と
バタバタバタバタバタしてましてですね

ブログの更新もせず睦月も残り一週間ですよ

いまさらながら

今年も宜しく御願い致します

で早速干支モノやらにゃという事で鳥彫ります

最初に「鳥」で思い浮かんだのが
福良雀みたいなコロコロした鶏が抱卵してる図で

そこから尾鰭がついたり醸造したり発酵させたりしていると
こんな川柳を自動書記・・・

育男を 育てた嫁の 右フック
金の卵は 後継こっこ

と共に
イクメンな軍鶏パパが抱卵している図
が爆誕しましたしたので

彫りますね♪





鹿角ザクザク彫りすすめ
鹿角は良い
ほんとタフ





六面図
沸騰させたヤシャ液に投入直後火を消し
2時間くらい放置でこの色味に





裏側
ふっくら胸毛(胸羽?)の中がぽっかり空いているのは
使わない時
置いて飾っとく時とかに
緒締の卵を格納(抱卵)するためでして
ふっくら胸羽(胸毛?)の隙間にチラリと見えるのは・・・
ひょいと持ち上げてみると現れる愛の結晶金の卵
え?やだ!もー
殻を破ってベイビー軍鶏がこんにちわ♪





紐を通すと画像上段のようになる仕様ですが
画像下段のように抱卵状態で紐を通す事も出来なくはなくてよ
え?無理矢理感が? あ・・・る?・・(汗)





育男を 育てた嫁の 右フック
金の卵は 後継こっこ

いくら言っても子育てに協力的にならなかった新米パパ軍鶏を
立派なイクメンに育て上げたのは嫁の切れ味鋭い右フック一発でした
夫婦の愛情を注がれ大切に育てられれば
金の卵になるのは必然
ハードパンチャーで名を馳せたパパ軍鶏のこっこは
闘鶏チャンピオンの血を受け継ぐ正統後継者なのでした

そんなお話





サイズはこんな





おまけ
お解り頂けるでしょうか
嫁の右フックでカットした左目頭に大判絆創膏貼ってるの(汗)
嫁も軍鶏なもんで
強いんだね





「良いパンチだったぜ」
サムズアップで嫁のパンチに称賛を贈る
根付「育男」完成です
(あ、因みに「育男」と書いて「イクメン」と読むという事で御願いします)

これでやっと至水の2017年がスタートした感じ

そして今年の目標は

「締め切りを守る」

あと沢山彫れるように

がむばりますよ!