2017/01/26

根付 其ノ捌拾玖

『怪流辺炉主』
素材 : 象牙、黒檀



投稿記事タイトルの作品ナンバリング其ノ捌拾玖
前回の投稿の根付「育男」のナンバーと前後しておりますが
コチラの方が「育男」より先
昨年末には完成していたのです

色々

ありましてですね・・・



昨年2016年11月
「第3回 THE GOLDEN NETSUKE AWARDS」授賞式参加のため
京都 清宗根付館に行きまして
授賞式当日の朝
根付館の近くにある梛神社へ寄った際
超立派カコイイ狛犬を拝見する事が出来ました

吽形の狛犬

阿形の方は下顎が欠損しておりましたが
それでも超立派カコイイ

すると唐突に

ホントいきなり

「双頭の狛犬獅子」

ってワードが頭に浮かび早速いつもの妄想開始
ものの数分でこんなのが・・・

怪気流るる地獄門辺り聳え立ち
絶える事無き業火を纏いし焼炉の主
地獄の番狛犬獅子
怪流辺炉主
ケ  
ル  ベ  ロ  ス

あーもう彫りたくてウズウズ止まらずですよ

彫りましょう





久々の象牙です

昨今世界的な象牙売買規制の動きが顕著になり
米国に続き中国でも商取引禁止が確定
「時代」といってしまえばそれまでですが
これが至水最後の象牙彫刻になりそうな予感・・・





六面図

向かって右が
阿形の獅子面
頭頂部に宝珠が埋包され
垂耳巻毛の獅子HEAD

向かって左が
吽形の狛犬面
一角耳尖りな狛犬HEAD
巻かないワサ毛で獅子HEADと対比させてみたよ





威嚇し荒ぶる獅子面
口角から火焔がムッハー

思慮深く黙する狛犬面
口開けないから鼻孔から火焔がムッフー





成りたて亡者よ地獄へようこそ
先ずはウェルカム火炙りを堪能するがいい





紐を通すとこんなです
火焔が結び玉を呑み込みます





サイズはこんなどっしり塊感
・・・大っきい(汗)





地獄の門番双頭の狛犬獅子
根付「怪流辺炉主」完成です



さてここで
この根付の悲しい顛末

根付の底面
至水の銘の上辺り一本水平に入った線が見えるでしょうか?

クラックです

ヒビが入ってしまったのです(涙)

根付師、というか象牙を扱う方々は
管理に相当気を使われます

気温の変化寒暖差、湿度、材に加わる様々な負荷・・・
意外に、実にあっけなく象牙は割れます

室内が乾燥する今の時期は細心の注意を払うべきでした
私の管理ミスが招いた取り返しのつかない事故案件です

此処にも其処にもクラック
嗚呼・・・

という事で
実はこの「怪流辺炉主」

売り物に出来ない(涙)

非売品なのですごめんなさい(滝涙)



それでこの「怪流辺炉主」
今後どうなるのかと申しますと

製作物が手元に残らないので
至水作品見本として自分で持ってるのもアリかと思ったのですが
それはGalleryも同じでして

本当にありがたい事で
在庫される事無く製作物が御購入されて行く現状

至水の根付が見たいとGalleryに来られた方に
何もお見せ出来ない事も多いそうで

Galleryと話し合った結果
至水の作例現物として
Gallery所蔵品となる事に決定致しました

非売品ではありますが
Galleryにて「至水の何か見せて」と仰って頂ければ
「怪流辺炉主」がお出迎え致します(涙)

象牙の扱いには努々油断してはならぬ

そう自分に言い聞かせた怪流辺炉主でありました



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